【映画】ウルフズ・コール/ハンターキラー比較考察

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フランス海軍の本物の潜水艦でロケした潜水艦映画で、緊迫感のある映画です。同じ潜水艦映画ハンターキラーもアメリカ海軍全面協力のもと、着岸中の現役アメリカ海軍の原潜の中で撮影した映画なので、見比べてみました。ウルフズコールは、”黄金の耳”を持つソナー解析の主人公でさえ、敵かどうかを即、解析、判断し、艦長に進言するプレッシャーに苛まれる苦悩を映画いています。一方、ハンターキラーでは、潜水艦だけでなく、特殊部隊の活躍もあり、アメリカ映画らしい作品となっています。どちらも、海中では、人間は何もできないと強く感じた映画です。
また、敵国が、今話題の某国であるというのも共通しています。

「ウルフルズコール」 のあらすじ(ネタバレなし)

【公開】 2020年 フランス映画
センサー、ソナー技術が進化した現在でも、アナログな人間の耳が結局、最終判断材料となる。
主人公は、”黄金の耳”をもつソナー解析特別官であり、既存の潜水艦ならば、スクリューの
枚数、ソナー音の音紋から即座に艦名を言い当てることができる。
ある日、工作員回収作戦中に、聞いたこともなく、データベースにもないソナー音に出会う。
この未知のソナー音が、敵かクジラか、主人公は迷ってしまう。
艦長からは、回収作戦継続か、敵なら反撃体制をとるか、5秒以内に判断しろ!と命令。
反撃戦闘体制をとると、静かに潜航している状態でなくなり、相手に位置が特定される。
主人公は、敵潜水艦と判断し、艦長に伝える。
当然、戦闘体制となり、敵に自艦位置を捕捉され、攻撃を受ける。
敵攻撃の損害により魚雷発射不能になり、浮上しての艦長自らロケットランチャーで、
攻撃対潜魚雷ヘリコプターを撃墜して、難を逃れる。
帰投後、謎のソナー音を調べ、それが、敵国の旧型原潜であり、データベースからすでに
音紋が削除されていたため、該当しなかったことがわかった。
上司に報告するも、潜水型ドローンで解析が完了したと言われ、相手にされない。
一方、同盟国支援を表明したことで、敵国との関係が悪化し、敵国から核の脅しを受けていた。
対抗で、大統領は、国際紛争抑止のため新型戦略ミサイル原子力潜水艦の出港命令を出す。
この新原潜の艦長に工作員回収作戦で共に戦った船長が着任し、船長たっての希望で
ソナー特別分析官に”神の耳”を持つ主人公が推薦される。
出港当日、新原潜に乗船しようとしたが、艦長から健康診断にて大麻が検出され、乗船不可を
言い渡される。
新原潜の出港を見送りながら、自暴自棄になり、軍隊を止めるつもりになっていたが、
司令部が封鎖されようとしている状況に気がつく。
何が起きたかわからず、封鎖直前に司令部へ駆け込み、敵国戦略ミサイル原潜から自国に向け、
核ミサイルが発射されたことを知る。
司令部に居合わせた主人公に提督からレーダー分析を任命され、ミサイルを発射した敵国原潜が、
前回未確認だった、敵の旧型戦略ミサイル原潜だと確定することができた。
敵ミサイルは、対空ミサイル網をすり抜けてしまい、着々と自国目指して飛来中。
大統領から、報復措置で、出港した新型戦略ミサイル原潜に、核ミサイル発射が発令された。
一方、主人公のミサイル解析により、飛翔コース、推力差分により、通常より軽いミサイルと
なっていることが判明。
核弾頭が装備されていない、通常ミサイルであると結論付けた。
しかし、大統領命令により、すでに核ミサイル発射命令が下されており、止めることができない。
さて、どうなる?

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「ハンターキラー 潜航せよ」 のあらすじ(ネタバレなし)

2012年 アメリカで出版されベストセラーとなった、米海軍原子力潜水艦元艦長と、
ジャーナリストの共同執筆小説『ハンターキラー 潜航せよ』の映画化。
【公開】2018年 イギリス映画
敵国原潜を追尾任務していた米国原潜の目の前で、突如、敵国原潜が爆発、沈没してしまう。
何が起きたかわからず情報収集開始した直後、米国原潜に向けミサイルが飛来、対処する暇なく
撃沈されるところから、物語がスタートする。
海軍司令部では、突如、追跡中の原潜からの定時報告がなくなり、姿を消したことで、
捜索のため、原潜(通称:ハンターキラー)を向かわせることにした。
この原潜の艦長は、新任で、海軍幹部学校卒業でなく、機関手、魚雷手、ソナー手と全て経験し、
ずっと潜水艦に乗務してきた叩き上げの艦長である。
司令部としても、敵国大統領のホットラインが不通となり、敵国と会話ができないため、
敵国状況把握のためNSA(アメリカ国家安全保障局)と共同で、ネービーシールズを敵国海軍基地
偵察任務に送り込む。
一方、現場に到着したハンターキラーは、沈没した原潜から、助けを求める打艦音を受信する。
直後、現場にいた敵国側捜索の原潜にみつかり、戦闘の末、相手の敵原潜を撃沈する。
打艦音は、最初に爆発撃沈した敵国原潜からであることが判明。
艦内には、敵原潜攻撃で仲間の原潜が撃沈されたのに、敵を助ける必要ないとの意見もあった
が、ハンターキラー艦長は、軍務違反を承知で、敵国原潜からの人命救助を行うことを決断。
助け出したのは、敵原潜の艦長と二人の水兵の3人。
敵艦長は、米国原潜が攻撃してきたため撃沈され、米国に助けられるとは情けないと感じている。
艦内も、仲間を沈めた艦長だと憎悪の目で見ている。
しかし、ハンターキラー艦長は、軍人である以上、命令でやったことだ。
立場が変われば、同じだ。

敵海軍基地に到着したネイビーシールズは、対岸から、及び海中ドローンを使い、敵海軍司令部の
様子を、米国海軍司令部に送信していた。
そこに、写っていたのは、敵国大統領と国防大臣。
しかし、国防大臣たちは、大統領側近を葬り、大統領を拘束している現場であった。
明らかに、クーデターが進行していた。
大統領が任を為さない場合は、国防大臣が全権を掌握できる権限があり、拘束した大統領に代わり
大統領命令により、戦争を起こすことがクーデターの目的であった。
さて、両国の行方は、いかに?

ネタバレありの考察

どちらも、現状の安全保障上の脅威に沿ったストーリー作りとなっている。
フランス海軍も、アメリカ海軍も全面協力しており、特に、原子力潜水艦内部は、現役の
本物を使った撮影であることが興味深い。

シリアスさ

やはり、潜水艦の中だけでのアクション(司令部と原潜のやりとり)にフォーカスしている分、
緊張感は、ウルフズコールの方が伝わってきた。
ハンターキラーは、海中戦とネイビーシールズによる陸上戦の2本柱に置いたことで、
潜水艦映画なのか、大統領奪還作戦なのかフォーカスが甘くなっているように感じる。
敵の基地に、ネイビーシールズ3人+大統領側近の4名での突入も、奇襲とはいえ、無理がある
ように思う。
緊張感というより娯楽的要素が強いと感じがする。
もちろん、潜航シーン(機雷回避など)緊張感あふれるシーンもあるが、純粋な潜水艦映画と
なっていなかったのが残念。
アメリカ(イギリス)映画なので、定番的なものかと思います。

リアルさ

どちらも、潜水艦内部は、本物を使っていることもあり、よくできています。
通信も、ミサイル発射手順も(完全に本当の手順ではないでしょうが)、本物っぽい演出が
されています。
ウルフズコールは、大統領命令発令後、核ミサイル発射のため、一切の通信遮断と、大統領といえ
ども中止命令を聞き入れない報復システムとなっていることが、この映画の肝である。
ネービーシールズの装備は、顔を出すためか、ヘルメットなしという一風変わった戦闘シーンに
は、違和感を感じる。
敵海軍基地へのルートは、厳しすぎて、どの潜水艦も毎回命がけで入港する必要がある設定は、
ちょっとやりすぎかも。
それでも、ぎりぎりで機雷を回避していくシーンは、見応えあります。

ストーリー性

ウルフズコールでは、プレッシャーに押しつぶされた、主人公が持ち場から逃げ出し、
魚雷格納庫(司令室から潜水艦の一番先頭の魚雷室(兵員ベッドがある))に逃げ込んでしまう。
ところが、相手攻撃の衝撃で装填しようとした魚雷が落ちて、下敷きになるというシーンは、
いかがなものかと思う。
そもそも、レーダー要員が敵の攻撃中に持ち場を離れるなどあり得ない。
せっかく海軍が協力しているのに、これでは士気喪失につながる脚本と思います。

キラーハンターは、敵国大統領がアメリカのネービーシールズに救出されるなど、国の威信を
貶める前代未聞の展開であるが、アメリカ側からすると、正義を貫いたという展開。
敵国もアメリカも、どちらも叩き上げ艦長の友情映画と言える。
状況は、異なるが、古典的名作 ”眼下の敵”(1957年 アメリカ・西ドイツ映画)を壮大に
したオマージュだと思えた。
個人的には、”眼下の敵”は超えられなかったと思います。
未だに、潜水艦映画の最高峰は、”眼下の敵”だと思っています。

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感想(1件)

全体評価(ネタバレ)

ウルフズコールは、途中の展開に不満は残るも、止められない核ミサイル発射を最後に止める
のは、人間の信頼感ということで、ハッピーエンドになっています。
実際にこんな状況の場合、訓練された軍人がルールを破れるのかは、疑問ですが。
なので、なおさら怖い映画だと感じます。

キラーハンターは、今風の壮大な展開がご都合主義的ですが、
(時間制約のある映画ですので、ご都合主義は仕方ないと思っていますが)
敵国艦長とのやり取り、機雷を回避するシーンは手に汗を握る、エンターテイメント性を感じました。