Amazon Primeドラマ ”沈黙の艦隊”シーズン1考察

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Amazon Primeにて”沈黙の艦隊”のドラマシリーズが公開されました。”沈黙の艦隊”をドラマ化するのは、非常に難しいと思っていましたが、海上自衛隊の協力もあり、少なくとも前半部分は、かなり迫力のあるドラマに仕上がっていると思います。ただ、原作が、約30年前の作品であるのに、今、この作品をドラマ化するのか?
何を伝えたいのか?そのあたりを考えてみたいと思います。

作品の概要

原作は、かわぐちかいじ氏で、
1988年から1996年まで、”モーニング
(講談社)に連載されていた。
当時、
内容的にもセンセーショナルな作品であり、
湾岸戦争が勃発し、日本の立ち位置はどう
あるべきかを問う問題作としてかなり話題と
なり、人気のあった作品です。
国会でも問題になり、政治家もかなり読んで
ファンがいたと聞いています。
麻生太郎氏も原作のファンであったようです。

アニメ化もされているが、原作の最終回までは描かれていない。
原作最終回に至るクライマックスは、
映像化も、内容的にも描くのが難しく映像化
不可な作品と言われていました。
本ドラマではどのように描くのか?
興味深いです。

なお、
原作には、女性主要キャストは登場しません。
唯一、
描かれた女性は、
海江田四郎の奥さんだけでした。
(ここは、泣けます!!)

ドラマの感想

映画は見てないのですが、
(”空母いぶき”のような難しい問題の映像化
 であり、原作から大幅に外れるのでは?
 と危惧して映画館に行けませんでした。)

ただ、
ドラマ版は、Amazon Primeで公開された
ので、見てみました。
思っていた危惧はなく、よくここまで、
原作に沿っていながら、映像化できたものだと
感心しました。
非常によかったです。前半の6話まで一気に見て
しまいました。
後半が楽しみです。
シーズン1をどのように締めくくるか楽しみです。
そして、シーズン2があるのか?

大沢たかお氏が、
プロデューサーを兼ねており、
本作品を映像化したとのこと。
キングダム”を撮りながら、
本作品のプロデューサーとして、交渉、準備を
していたのは素晴らしいことだと思います。
それだけ、
本作品に思い入れがあるということだと
思います。
演技も、原作のクールな海江田でなく、鬼気迫る悪魔的な感を表現したのも良いと思います。
とにかく、
本ドラマ化の脇役の俳優さんがキャスティング含めどなたも素晴らしい演技でした。

出演キャスト

映画 沈黙の艦隊
https://silent-service.jp

内閣側

やはり総理大臣 竹上を演じた、佐野高志
気の弱い総理が、決断を迫られ、総理として自覚する演技はやはり素晴らしいです。

海原大吾役の橋爪功氏も、いろんな役をやられていますが、
今回もフィクサー感が感じられる素晴らしい演技でした。

外務大臣役の酒向芳氏も、最近バイプレーヤーとしてよく出られており(変わった役を、上手く演じられていますが)
外務大臣らしい演技で、誓いの盃の場面での、
医者に止められてるから”は、笑いました。

防衛大臣の、夏川結衣氏も日本を思って、シーバット計画を推し進めてきた責任者として、
毅然とした演技がよかったです。

そして、
官房長官 海原渉役の、江口洋介氏は、一番のキーマンでダブル主役、いやトリプル主役と
言っても良いと思います。
相変わらず、熱い演技で良いと思います。
ただ、
髪型が気になって。。。(笑)

自衛隊側

一番は、
深町洋役、玉木宏氏は、海江田を必死で止めようとする熱い漢を演じています。
演技自体は素晴らしいですが、
原作の深町のイメージと微妙な違和感を
感じます。
原作の深町が豪胆な一本木な漢であるのに、
ドラマ版の深町は、
原作に比べて若干線が細い設定になっていると
感じます。
勝手な解釈ですが、
原作の海江田と深町は、クールと猪突猛進の
静と動の対比になっていたのを、
ドラマ版では、
海江田が鬼気迫る姿にしたことにより、深町の豪胆さを削り、少し細くしたのでは?
と推測します。
これは、これで良いドラマ演出だと感じます。

たつなみの副艦長 速水役の水川あさみ氏も良い演技しています。
原作では、男性か女性かわからない中性的な男前の副艦長でしたが、
ドラマ版は、明確に女性にしていました。
たつなみのお母さん的存在です。
深町艦長に信頼を寄せています。

他にもたつなみには、女性のソナー員も乗務しており、
自衛隊の男女比アピールを感じました。(笑)

一方、
沈没したやまなみには、女性士官はいなかったです。
シーバット乗員になるために、女性は選ばれていなかったということのようです。
やまなみにも、女性士官を入れていたら
面白かったのにと、
勝手に思いますが、ストーリーが原作からズレて難しくなるのだろうとは思います。

海自一のソナーマン 南波栄一は、ユースケ・サンタマリア氏が演じていますが、良い感じではまっていると思いました。
緊迫感に、ユーモアをもたらす役どころです。
それでも、海自一の耳を持つ男ですから、技術は超一流です。

その他

他にもキャスター役の上戸彩氏も良い演技していました。
個人的には、この配役はマスコミを出す必要があり追加されたのだと思います。
(原作には登場していません。)
マスコミを描くならば、もう少し突っ込んだ描写にすべきだと思いますが、なんか上滑りな感じがしました。

もちろん、
ドラマ枠で表現できる時間が映画より増えたとは言え、マスコミの詳細を描くには無理があるとは思います。

アメリカ海軍関係者の演技も素晴らしかった
です。
大統領は、これからさらに重要な役になるので、どのような演技をするのか楽しみです。

総論

流石に、
映像化不可と思われた作品を、原作に忠実にかつドラマとして見応えあるように撮ったのは素晴らしいと思います。

俳優・制作スタッフの熱い気持ちが伝わってきます。

また、
防衛省・自衛隊が協力しており、ディーゼル潜水艦の内部や潜水時に艦首から潜る様子を写すなど、リアルに感動しました。

日本の制作会社だけでは、このような話は映像化できなかったと思います。
ある意味ここまでリアルな潜水艦ドラマは、
アメリカ含め他国にも今までなかった
と思います。

特に、
核ミサイルおよび原子力潜水艦という、日本国内では避けるテーマを選んでいるので、
余計に難しかったと思います。

一方で、
現時点、最終話が公開されていませんが、
この時期に、この作品を、Amazon Prime Videoにて世界240カ国に公開するというのは、どうのような感想を持たれるのか興味あります。
アメリカ人も見ることができるドラマで、
日本(やまと)が
第三艦隊のアメリカ原子力空母 エイブルハム・リンカーンを撃沈するというのは、アメリカ人にどう捉えられるのか?
第七艦隊の原子力空母 ロナルド・レーガンと挟み撃ちにされる設定は、
(米国海軍の原子力空母名称は、大統領に敬意を払って大統領名を付けることが多いです。)
どちらも共和党大統領であり、共和党に挟まれるやまと(日本)
というのが、これからのもしトラになると起こるであろうことを暗示しているようで面白い。

気になるところ

3DCGをふんだんに入れ、リアルさを表現しており、
第七艦隊、第三艦隊の艦列を描いているのは
壮大でよかったです。

ただ、
空母デッキには、F-18等の戦闘機は並んでいましたが、デッキクルーが全く描かれておらず、何か、絵に描いた餅的な違和感を感じました。
永遠の0赤城のように、デッキクルーまで描いていればよりリアルさが伝わったのかな
と思います。

もちろん、
その分、手間とコストが膨大にかかることは理解しますが。。。
ここまでやったのだから、もう少しとも思いました。

原作が、30年前の作品であり、
現在の兵器、探知能力、戦略は
大きく進歩していると思います。
兵装や戦略に詳しいわけではないですが、
やまとが放ったハプーン魚雷の迎撃を、空母のファランクスだけで
撃ち落とすのは、如何ななものかと思います。
確かに、
ハプーン2発ならば、空母のファランクスで撃ち落とせますが、
実際には、周りにイージス艦が護衛しており、空母が攻撃を受けた
場合は、イージス艦がミサイルを撃ち落とすことと、敵対象船舶を攻撃仕留めます。

本来ならば、
やまとハプーンを発射したことで、
位置を特定されイージス艦からの攻撃で撃沈
されていると思います。

原作に沿う必要があり、無理に設定していますが、現代戦では考えられない戦い方だと思われます。

30年前なら(それでも米国海軍はできていたとは思いますが)
それでも通った戦い方とは思いますが、
物語と割り切ってみるしかないです。

政府が勝手に、シーバット計画に米国と同意していたこと、
それを、総理と防衛大臣で進めていたことは、
流石に無理がある設定ではないかと思います。

もちろん、フィクサーである海原がいたからできたと、なりますが、それだったら、
日本は独裁者国家なの?となります。

日本が、総理大臣より偉い人(実権力者)がいるようにドラマで描かざるを得なかったのは、
シーバット計画のような正規の議会では
絶対に通らない原子力潜水艦の保有、ひいては核武装を実現する設定であるとは思います。

フィクションとしてのドラマでも、他の国の人に日本はそんな国なんだという誤解を与えないかが心配です。

原作では、
アメリカも大統領より上の実権力を握る
産軍複合体のメンバーが描かれています。
どこの国も実態は、そんなものなのでしょう。

しかも、
自衛隊がアメリカ海軍の指揮下に入る、ましてや、第七艦隊に従属するというのは、
発覚すれば、国を挙げて大問題となるとことと思います。

それでも、
現在の国家安全保障の観点からすると、
現実問題としても、一番方法なのかもしれません。
現在の国際情勢を鑑みると、一つの案を提示するドラマになっていると思います。

実際には、野党のみならず知らされていなかった与党からも総反発や
マスコミからの総攻撃の対応に追われて、総理として対米対応がどこまでできるのか?
日本がひっくり返るほどの騒ぎになるだろうと思いますが。。。

今問題の原作者とドラマ脚本家との確執についても、本作品は原作そのままでのドラマ化は難しいと思っていますしたが、原作者とプロヂューサー、脚本家が上手くまとめた作品だと感じます。
原作者の意向次第の部分はありますが、原作者の意図を汲んだドラマ化が難しいにも関わらず、
ドラマを作り上げた、Amazonおよび、制作スタッフの熱意が伝わるドラマであったと思います。