”ちはやふる” 競技かるた 畳の上の格闘技

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ちはやふる”で知った、競技かるたは、世界最高レベルのゲームシステムです。シンプルなルールにも関わらず、競技が進行し、枚数が減る事で、さらにゲームが複雑になります。この様な難易度が上がる競技形態は、他に類を見ないゲームシステムだと思います。まさに、”畳の上の格闘技”です。競技かるたの世界を知りたければ、ぜひ、”ちはやふる”を観ることをオススメします。必ず、作品にハマり、競技かるたの世界に興味を持たれることと思います。

かるたの歴史

かるたの始まり

かるた(歌留多骨牌)は、16世紀にポルトガルから
持ち込まれた遊びのようで、
ポルトガル語のカードの意味の
CARTA”が語源と言われています。
(厚紙に絵を描いたものは、
総称で”かるた”と呼ばれています。
花札、いろはがるた等)

元々、日本にも同様な遊びがあり、

平安時代に、
二枚貝の貝殻を合わせる、
貝覆い(貝合せ)
があり、これが、西洋から伝来した
かるたと合わさり、

天正時代(1572年〜1592年)
天正かるた”として、九州で遊ばれました。
当初は、貴族や武士の遊びでしたが、
その後、庶民の遊びとして定着します。

競技かるたの歴史

天正かるたの普及により、
各地でローカルルールのかるた遊びが
増えていきますが、

明治37年(1904年)に、
ローカルルールをまとめ、東京かるた会を設立し、
第一回競技かるた大会統一ルールの下、開催した。

競技かるたの大会は、
昭和9年(1934年)に、
大日本かるた協会
として全国統一が図られた。
その後、戦争のゴタゴタを経て、

昭和32年(1957年)に、
全日本かるた協会”として統一された。

競技ルール

競技ルールは、至って簡単です。

小倉百人一首の、上の句を読手が詠み
読まれた下の句を、先に取った方が勝ち

競技は、2人向き合って、1対1で対戦

自陣(自分側)、敵陣(相手側)に
それぞれ25枚配置し、
先に自陣側に札がなくなった方が勝ち

敵陣の札を取った場合は、取った方が
自陣から1枚相手に送る

基本的なルールは、これだけです。

戦略的競技

シンプルな競技ルールにも関わらず、ハードな競技です。

記憶力、
体力(瞬発力、持久力、体幹(バランス))、
精神力

を必要とされる競技。

対局では、
老若男女の違い、体格の違い関係なく
戦える競技。
大会では、1日で、5試合〜8試合を行う。

試合が進み、詠まれた札が多くなると、
決まり字が変化してくるため、
複数あったものが、
すでに詠まれていれば、
何が詠まれて
何が残っているか
見極め、”お手付き”しないように、
配置を覚え直し、
相手より早く取ることに集中する。

暗記時間

対局前に、自陣の配置
(一般的に、自陣配置方法は決めている)
敵陣の配置を15分間覚える時間がある。
この時間は、どのように使っても良い。
(その場にいなくても良い)

札を動かす(札の再配置)

試合が進み、配置に偏りが出た場合や、
相手への撹乱のため、
自分の配置している札を
数枚、配置変更する事ができる。

全札の移動は、基本的にマナー違反となる。

相手にとっては、
配置の覚え直しが必要になるが、
自分自身も変更を覚えておく必要がある。

このため、
競技かるたでは、
覚えては、忘れ、再度、覚えることの
繰り返しを行う。

記憶力とともに、忘却力も必要とされる。

これを、一試合で繰り返しながら、
大会では、5〜7試合行う。
大変過酷な競技である。

空札

百人一首100札のうち、
下の句だけ裏返して混ぜ、その中から
各自25札ランダムに取出す。

100札 ー (25札 × 2人) = 50札

つまり、半分の札は使われない事になる。
読手は、100首ランダムに詠むため、

読まれない札(両陣にない札も読まれる)
にも注意する必要がある。

送り札

競技中、
読まれた札”当たり札”ではない、
間違えた札に触ると、
お手付き”となり、
ペナルティで、相手陣から1札送られる
(”送り札”)。

以下の場合、”お手付き”となる。
詠まれた札が、
(1)敵陣にあり、自陣の札に触れた場合
(2)自陣にあり、敵陣の札に触れた場合
(3)空札なのに、どれかの札に触れた場合

自陣にあって、自陣の違う札に触れても、
お手付き”にならない。
このため、競技では、自陣の詠まれた札と
その周辺をまとめて払ってしまうと言う
豪快な取り方もできます。
とにかく、相手より早く取る競技です。

どの札を送るかは、状況により異なるが、
大山札”や、
途中まで一緒の札である”友札”を分けて、
敵陣に送り、”別れ札”とすることもある。

自陣に決まり字が途中まで同じ”友札”が
自陣に複数札ある場合
相手に狙われやすいため、敵陣に分ける
こともある。

自陣か敵陣の一方に、
分けて置かれてた”友札”は、
渡り手”で両方の札に素早くアクセスする
必要がある。

決まり字

上の句が詠まれた時に、
先に下の句の札を取り合う競技です。

競技者は、お互いに自陣、敵陣の札の配置を
記憶
して競技しています。


このため、
詠まれた上の句の先頭何文字で、
相手よりどれだけできるだけ早く
下の句を特定できるかの競技
です。

この、上の句の札を特定出来る文字数を、
決まり字”と言います。

決まり字”には、1字〜6字までの長さがあります。

上の句の
1字決まり” :(7首)
2字決まり” :(42首)
3字決まり” :(37首)
4字決まり” :(6首)
5字決まり” :(2首)
6字決まり”(”大山札”):(6首)

競技システムの素晴らしさ

将棋や囲碁との違いは、
先を読むのか、
現在を読むのか
の違いだと思う。

スピードを競いつつ、正確性を求められる。
そのためには、
相手より早く下の句の場所を特定し、
取る必要がある。

早く取るために、色々なテクニックが必要
となります。
囲い手”で、
自陣の”友札”や”大山札”を守りつつ、
敵陣の札に手を伸ばし、
確定した場合にどちらでも取れる様にする。

囲い手”の下を掻い潜る、”囲い手破り”など
の技術も必要になります。

また、
送り札”を戦略的に使うことが必要です。

試合展開を左右する戦略であり、
より効果的に使うために、
自分にとってどの札を送れば、
優位に、効率的に戦えるかを判断する
必要があります。

その場の状況に応じて、
異なる戦略を取る必要が、あります。

決まり字の変化により、
判断力、記憶力、集中力、瞬発力など、
全てを使って戦う必要があります。

それらを、使いつつも、
焦ったり、勢い込んだり、力んだり、
することなく、
お手付き”などをしない、強靭な精神力
試されます。

お手付き”をしてしまうと、
無駄な”送り札”が発生してしまいます。

最悪なのは、
相手に自陣を抜かれた上に、
自分は敵陣に”お手付き”したり、
空札”なの、
自陣と敵陣どちらも触ってしまうと、
ダブ”と言い、相手から2札送られる。
勝敗を大きく左右するミスとなります。

そして、
一番大きな勝敗を分ける要因は、””です。
百人一首の100首の半分しか場にないため、
確率的に2回に1回しか読まれません。

しかし、
実際の競技では、5回連続で”空札”と言う
こともあります。

どれだけ、
集中力を途切らせず
しっかり、読手の音を聞き、
暗記から、場にあるか、ないのか判断する。

この判断力の差が、
取れるか、
取られるか、
お手付き”するか、
の別れ際になるという、
非常にシビアな総力戦です。

競技かるたは、
明らかにスポーツと呼べるものです。
これだけの文化的スポーツは、
他に類をみない競技となっています。

どんなスポーツも、
集中力
精神力
平常心
判断力
もちろん体力が必要ですが、
競技かるたは、これに、
記憶力

といった要素が加味された
競技となっています。

他のスポーツの場合、
(例えば、野球、サッカー、ラグビー、
相撲、ゴルフ、剣道、柔道 等)
集中力、精神力、平常心、判断力、体力は
当然必要です。
ただ、
記憶力は、他のスポーツ以上に
必須な要素となっています。

こんなに素晴らしいスポーツですので、
もっと競技人口が増え、
プロが成り立つ競技となってほしいと
思います。

ちはやふる基金活動

ちはやふる”の作者の、末次由紀先生は、
作品を通して、競技かるたを応援するために、

ちはやふる基金

”ちはやふる小倉山杯”

を設立し、競技かるたを盛り上げています。

競技かるたに関心がおありの方は、
ぜひ、協力してみてください。