新・旧「銀河英雄伝説」どう変わった? ”そして、銀河の歴史がまた、1ページ・・・”

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銀河英雄伝説原作40周年となる、累計発行部数1500万部を超えるベストセラー小説を原作として、アニメ化されており、2018年から新たにリメイク版のアニメ制作が開始された、”銀河英雄伝説 Die Neue These”と、1988年〜2000年に作成されたアニメ版との間は、30年間の開きがあります。
この2作品の違いを考えてみたいと思います。

概要

作品のあらすじ

遠い未来の銀河系は、帝国軍自由惑星同盟
に2分されていた。
そこに、綺羅星の如く現れた、
帝国軍 常勝の天才
ラインハルト・フォン・ローエングラムと、
自由惑星同盟軍(同盟) 不敗の魔術師
ヤン・ウェンリーが、
両陣営で頭角を現すことで、膠着していた
両陣営の歴史が大きく動き出すという、
壮大なスペースオペラとなっています。
銀河系三国志と言っても良いと思います。

小説

田中芳樹氏によるSF小説。
1982年11月に徳間書店(トクマノベルズ)
から刊行された。

本編10巻と外伝5巻が刊行されている。
作者の田中芳樹氏は、後日談、続編の執筆
は否定している。
このため、
Die Neue These“が、リメイク版となった
のではないかと思います。

旧”銀河英雄伝説”(石黒版)アニメ化

1988年〜2000年にかけて、
OVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)中心に
展開された。

当時のメディアは、VHSビデオが主流であり
店頭販売用ビデオ(VHS/レーザーディスク)
作品として発売された。

当初のアニメは、膨大なストーリーにも
関わらず、全て手描きのため、
アニメーター負荷が大きかったためか、
クオリティが画一化されておらず、
信じられない作画崩壊
が見受けられた。

この頃、
下請けを初めて韓国に出し始めた時期で、
韓国側にアニメ技術がまだ伴って
いなかった様に思われる。
現在では、
韓国なしにはアニメが作れないほどに
技術向上している。

2001年以降DVDがメディアの主流になり、
DVD化にあたり、原画をデジタル化し、
修正・補正し直しを行なった。
2007年には、アニメ化20周年を記念した、
銀河英雄伝説 LEGEND BOX
も発売されている。
その後、
2009年には、
銀河英雄伝説 Blu-Ray BOX
も発売されている。

話の最後は、
そして、銀河の歴史がまた1ページ
という、お決まりのフレーズが流れる。

これが、痺れます。
銀河英雄伝説を観ていることを実感します。

新”銀河英雄伝説”(Die Neue These)アニメ化

2018年に、旧版の石黒監督版のアニメの
リメイクとしてでなく、
原作小説の再アニメ化が行われた。
制作会社は、”黒子のバスケ”や”攻殻機動隊”で
有名な、”Production I.G”が担当している。

Die Neue These”は、
訳すと、新論、新説、真説となる。

現時点、
第1シーズン ”邂逅” 2018年
第2シーズン ”星乱” 2019年
第3シーズン ”激突” 2022年
第4シーズン ”策謀” 2022年
が作成されており、
CS・ファミリー劇場や、NHK Eテレ
放送されている。

NHK Eテレ版は、
オープニング・エンディング曲、一部BGMが
新規に作られたものに変更
されている。
また、
ヴェスターラント攻撃のセリフが、
オリジナルから一部差し替えられている。

マンガ

道原かつみ
藤崎竜
鴨下幸久
などの作画のコミックが有名です。

演劇・ミュージカル

2011年〜2015年に
舞台 銀河英雄伝説”が上演され、
2018年には、
舞台 銀河英雄伝説 Die Neue These
が上演されている。

2012年、2013年には、
宝塚歌劇団によるミュージカル歌劇
銀河英雄伝説@TAKARAZUKA
も上演されている。

新・旧の違い

ストーリー

旧版(シリーズ総監督の石黒昇氏の
名前をとって、石黒版と呼ばれる)
は、原作に沿っているものの、外伝の
エピソード挿入や、
登場人物の出番が原作と異なる
(例えば、
ラオ少佐アッテンボロー少佐等)
ノイエ版Die Neue These)は、
原作に沿って描いているが、逆に、
淡々と進んでいるようにも思えます。

個人的な考えですが、
石黒版は、原作にない、または、外伝などの
サイドストーリーを挿入することで、
物語の厚みを出していると思えます。

素人考えですが、
制作側の伝えたい表現を観客に伝える
ことは本当に難しい
のだろうと思います。

映像

流石に、30年の違いは大きいと思います。
30年前に、初めて石黒版を見たときは、
斬新な映像だと感動したことを
覚えています。

ところが、
30年経ち、最新の3Dグラフィックス
で制作された、ノイエ版の戦闘シーンは、
素晴らしく綺麗で、派手で、インパクト
ありました。
映画レベルの描写です。

しかも、宇宙戦艦が、広大な宇宙空間に
展開し、各個戦闘している絵作りは
リアルな表現になっています。
石黒版の作成時では、技術的に点の羅列での
描画が精一杯だったのだろうと思います。

制作時点の技術から40年経ってしまい、
映像もデジタル化になり、
制作する機器も、
CPU/GPUなどのハードウェア技術
Adobe After Effectなどの映像エフェクトを
付けるソフトウェア技術
進化を感じます。

30年の進歩により、最新技術で描かれている
ため、当然ですが、
圧倒的にノイエ版の方が優れています

キャラクタ

キャラクターデザインも、大幅変更されて
います。
ノイエ版は、今風(?)なのか、
うだつの上がらない風貌のはずのヤンまで、
男前に描かれています。
石黒版は、80年代らしい、丸みを持った
キャラクタになっていて、
見慣れているので、
石黒版のキャラの方が安心できます。

個人的に、ノイエ版キャラで特に違和感
を感じるキャラクターデザインは、

ジークフリード・キルヒアイス
優しい性格が顔に出ていない。
石黒版の方が、親しみを持てます。

石黒版では、
フェザーン商人で、ヤンの幼馴染の
ボリス・コーネフが、
かわいそうに。
良い人は長生きできない
”と
言っていたが、
その通りだと思えたキャラだった。

アレックス・キャゼルヌ
ノイエ版は、悪人に見える(笑)
石黒版は、良い人ではあるが、
仕事ができる人には見えなかった。
これは、どっちもどっちかな。

ワルター・フォン・シェーンコップ
白兵戦の達人にしては、
ノイエ版は、優男すぎると思う。
石黒版の無骨さのある大人の男を描いて
いる方が良いと思う。

今風と言われれば、仕方ないですが
どのキャラも同じ顔に見えてしまう。
これは、個人の好みです。

BGM

石黒版のウリは、戦闘シーンのBGMが、
全てクラシック音楽でダイナミックさを
表現していた。
ノイエ版は、クラシックは使っていないが
戦闘シーンにもあっていると思います。

どちらが良いかは、好みですが、
石黒版のクラシック戦闘がインパクトが
あったのは確かです。

新旧の違いで感じたこと

個人的には、石黒版は90年代における
アニメの傑作だと思いますが、
流石に古典となっているのは確かです。

画角も4:3だし、
画質も荒い。
その後、リメイクで、
デジタル化はされたものの、現在の高画質、
3DCG技術で作成されたアニメ作品には
敵わないのは確かです。

それでも、
ストーリー構成や、背景の説明は、
石黒版の方が入り込みやすいのではないか
と思います。

時代背景もありますが、
石黒版が、アニメで100話以上のシリーズ
を制作できたことは、すごいことです。
それだけ人気があったということです。
(当然、ビジネスができたということ)

同様に、
ノイエ版にも人気を求められています。
そのための、キャラ変更であったり、
戦艦デザイン変更して、現代風にしている
と思っています。

どちらが好きかは、人それぞれですが、
ノイエ版の人気が出ることは、
銀河英雄伝説ファンとして、
嬉しいことです。

原作小説は、
最良の独裁政治と
腐敗した民主主義の戦いを描いています

帝国と、民主主義の組織の中で、
いかにして、成り上がり、昇進し、
どのように権力を掌握していくかが
物語となっています。

ちなみに、
帝国軍ラインハルトも、
同盟軍ヤンも、並外れた能力を持っているが、
実力だけでは昇進できない。

ましてや、ヤンは、戦うことが嫌いで、
歴史家になりたいと思っている。
(お金がなかったから、
国のお金で歴史の勉強ができる、
士官学校戦史研究科に入学した。)

ラインハルトは、姉を奪われた恨みから
皇帝を打ち倒し、帝国を乗っ取る野望
を抱いている。

ラインハルトは、姉が後宮に入ったことで
皇帝には気に入られています。
(皇帝は、ラインハルトの野望に気がついて
おり、ラインハルトに滅ぼされることを
望んでさえいるように描かれている。)
帝国貴族のやっかみから、最前線に送られ
それでも、戦果を上げ続けることで、
昇進していきます。

一方、
同盟軍ヤンは、偶然が重なり、実力を
発揮できる場が与えられ、
特に上層部の作戦失敗による敗戦の責任を
民衆から目を外らせるため、英雄として
持ち上げられる
ことで、認められていく。

両者とも、昇進の途中は苦労するものの
勝ち続けることでのし上がっていきます。

そして、それぞれが、その後の二人の
運命が絡み合っていくという、
素晴らしい、世界観です。

石黒版とノイエ版の一番の違いは、
単純に時代だと考えます。

30年経って、
現在の最新技術で、名作を描き直すことで、
新しい作品にしたい

と考えたのでしょう。

ぜひ、
一人でも多く、この作品を観るなり、
読むなりして、世界観を楽しんで
ほしいと思います